川戸由起さんのコラム

「ゆずり葉という名の産婦人科 その二」

●樹木、草花の選択

 人の心を癒す植物があるとすれば、一番の候補に「可憐な小花」をあげたいと、私は思います。小さな花が群れて延々とつづいて咲いている風景。想像しただけでも清々しい気持ちになりますね。色は、淡いピンクや紫系が良いと思います。

 「ゆずり葉」の庭とエントランスには、地面を覆うように咲く、さまざまな種類の草花を植えました。
これらの草花は、花だけではなく、葉の色合いにもバリエーションをもたせてあり、季節の移り変わりとともにいろいろな表情を見せてくれます。

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●庭を作るということ

 岩砕の道の小さな岩を一個一個並べていく作業は、寒いし、腰は痛いし、ここはやっとできたとか、職人さんたちにはたいへんなご苦労だったと思いますが、それをえんえんと続けてくれました。それが、昔の人が街道の石畳をつくっていく作業と重なってみえました。

 人がいかに自然のものをつかって、いろんなものを活かして生きてきたかを感じました。自然の営みは、一日一日の積み重ね。ぱっぱっぱとつくれるものとは違って、その時間と汗水がつまった味のあるできあがりとなり、それが、熊野古道や中山道などを辿る道すじに、悠久の時間を感じさせるのかもしれません。

 ゆっくりお産の準備をして、いのちを大切につないでいくという院長先生の思いに応えられたのではないかと思います。

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庭師の小野さん

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石畳の最後の一石を入れる院長先生と奥さま

●できあがってから、お聞きしたお話です。

 つわりがひどくて辛いと言って来院された妊婦さんが、ハーブティーを飲んで、多目的室でねっころがって庭をながめていたら、落ち着いて気分がよくなりましたと言って帰っていかれたと、院長先生が教えてくれました。また、年配の方がそこを訪れて、2時間ぐらい庭をながめながら、木の床に座ってみえたとも。
 何かしら心に残るものをお届けできたのなら、とてもうれしく思います。


●修景の大切さ、むずかしさを、あらためて実感した作庭でした。

 庭づくりにはいろいろなやり方、手法があります。できあがったものを組み合わせてつくる方法もありますが、一個の石とかレンガとか、何もないところからつくっていく方法、それを考える楽しさをあじわえる庭づくりに、あらたな魅力を感じています。
 一つ一つのものを大事にあつかう。ほっといたら捨てられてしまうのに、何かに使えると考えるのは、お宝を見つけるみたいで楽しいですね。

 院長先生の想いと理解があって、建築家さんのコンセプトがあって、自分の思いとの調和に気をつかい、ひとりよがりな想いを何度も壊してはつくりという作業を、半年以上繰り返した結果ですけれど、あらためて修景の大切さについて実感しました。

それを見る人の想いや感じ方は全部違います。ですから、大きな括りとしてのテーマが決まったら、形式にとらわれずにさまざまな要素を入れながら、庭の隅々までテーマを反映させるように、細かく丁寧なつくり込みをしていくことが、とても大切だと思います。

川戸由起さんのプロフィール

川戸由起さんのプロフィール写真

桑名市生まれ。
1級造園施工管理技師。
スカイフロントコーディネーター。
名古屋音楽大学音楽学部器楽学科ピアノ専修卒。
1997年ランドスケープアーキテクト小出兼久氏に師事。
同氏主宰の「ランドスケープデザイン塾」講座を修了。
同年、米国ワシントン州立大学にて「海外ランドスケープデザインセミナーを修了。
98年に「リバーズランドスケープデザイン」を設立する。
04年浜名湖花博にて都市緑化技術の庭「カネソウ㈱出展ブース」をプロデュース。
同じく屋内展示では「NPOみどりの風出展ブース」をプロデュースし、共に総合銀賞、他多数部門賞。

  • 三重県桑名市にあるリバーズランドスケープデザインのホームページリバーズランドスケープデザイン(ガーデンプラット版はこちら

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