庭づくりというと「日当たりの良い南側に作るもの」というイメージをお持ちではないでしょうか。しかし、土地の条件や接道の関係、周囲の環境によっては、南側が必ずしも理想の場所とは限らない場合があります。特に都市部や住宅密集地では、プライバシーや騒音、交通量の多さといった事情から、実際に「南側に庭をつくれない」「つくりたくない」というケースも少なくありません。そのようなとき注目したいのが、北側の庭です。「北=日陰」というイメージから敬遠されがちですが、実はその特性を活かせば、快適で魅力的な空間をつくることができます。
北側は“避暑の庭”
画像引用元:株式会社大志園
北側は建物の影になる時間が長く、夏でも直射日光が当たりにくいため、涼しく過ごしやすい環境になります。逆に、南側の庭では日差しが強すぎるため、外で過ごすのに暑さやまぶしさへの対策が必要になることがあります。家の中でもカーテンを閉めっぱなしにして眩しさを対策することになり、庭の鑑賞ができないということにもなりかねません。
一方で、北側の庭は暑さを避けられるだけでなく、エアコンの室外機の設置場所としても最適な場所です。直射日光を避けることで効率よく稼働し、省エネにもつながります。
日陰を活かす植物の庭
北側の庭には、半日陰〜日陰を好む植物がよく合います。
たとえば、
- ギボウシ(ホスタ)
- ツワブキ
- クリスマスローズ
- ソヨゴ
- ハイノキ
- キンモクセイ
- ツルハニチソウ
これらは半日陰〜日陰でも元気に育ち、葉や花の質感が引き立ちます。やわらかな光の中では、葉の色合いや陰影が美しく浮かび上がり、落ち着いた品のある雰囲気が生まれます。
北側だからこそ見える“植物の顔”
植物は光の方向に向かって成長します。これは「光屈性」と呼び、特にひまわり畑のような事例を見れば一目瞭然です。南側に庭がある場合、植物は太陽に向かって育つため、家の中からは背中しか見えないことも。その点、北側の庭では、南からの光に向かって植物が育つため、リビングやダイニングの窓から花や葉の表情を楽しめるのが大きな魅力です。日照が穏やかな分、植物の成長も穏やかなので、みずみずしさを長く保てるという利点もあります。
北庭を快適にするための工夫
もちろん、北側の庭にも注意すべきポイントがあります。北側の庭は、日照時間が短く、湿気がこもりやすいので、コケやカビの発生リスクがあります。設計時には、風通しの確保や排水設計が非常に重要です。また、樹木の配置や落葉期の管理なども工夫して、暗く冷たい印象にならないようバランスをとることがカギとなります。明るめの舗装材を使ったり、壁面にグリーンを這わせて立体感を出したりと、視覚的に“温もり”を感じられる工夫も有効です。
まとめ
庭づくりに「南向きが理想」という常識はあっても、それがすべてではありません。土地の条件や周辺環境にあわせて最適な配置を選ぶことで、より豊かな住まいづくりにつながります。北側の庭には、静けさや涼しさなど、南側とは違った魅力が詰まっているので、固定観念を少し手放して、「北側の庭」という選択肢にも目を向けてみてください。
ライター:Naaya